肝疾患病態栄養専門管理栄養士
肝疾患病態栄養専門管理栄養士とは
肝疾患病態栄養専門管理栄養士とは、肝疾患の栄養療法や代謝に精通し、研究や臨床で求められる高い倫理観、情報収集能力、対人関係形成能力、洞察力を持ち、肝疾患における身体機能や病期に応じた栄養療法に関する高度な知識と技術を有する管理栄養士である。また、肝疾患患者の病態に応じて栄養療法を適切に行うことで、肝疾患患者の病状改善につなげることのできる能力を有する。特に慢性肝障害および肝硬変、近年増加しているアルコール性あるいは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では栄養介入、治療が重要である。さらに、肝疾患に対する内科的、外科的手技による治療、薬物療法を理解するとともに、その円滑な診療に貢献すべく栄養学的ケアを行い、治療成績の向上に資する役割を担うものである。
- 肝疾患患者の病態を理解するとともに、その病態に応じた栄養障害を適切に評価・予測し、適切な栄養学的治療介入を行うことができる。
- 肝疾患に対する薬物療法とその副作用について理解し、病状に応じた適切な栄養支援をすることで、治療成績の向上に資することができる。
- 肝疾患に対する内科的処置、外科的処置についても理解するとともに、治療に伴う有害事象の軽減と肝機能の維持・回復に向けて、個々に応じたきめ細かな栄養管理の提案と実践、ならびに栄養支援ができる。
- 肝疾患の病態における栄養素等の代謝を理解し、輸液・経腸栄養を含めた栄養の投与に関する提案と調整ができる。
- 脂肪性肝疾患の病態を理解し、適切な栄養介入、食事指導ができる。また脂肪性肝疾患に伴う様々な合併症、メタボリックシンドロームもあわせて病態を把握し、治療方針に基づき生活習慣の改善・維持に繋げることができる。
- 慢性肝疾患、肝硬変でみられる門脈圧亢進症、およびそれに伴う食道静脈瘤や下腿浮腫、腹水、肝性脳症、サルコペニア等の発生要因に関する知識を有し、それらの食事療法に関する提案と調整ができる。
- 肝疾患患者を中心として、診療に携わる医師、看護師をはじめ多職種と医療情報を共有し、連携して栄養診断・介入および栄養支援ができる。
- 肝疾患患者に対する栄養介入の必要性について、肝疾患診療連携拠点病院に設置されている肝疾患相談・支援センターおよび肝疾患専門医療機関と連携し、患者および地域に啓発することができる。また、医療施設の中だけでなく、介護、在宅療養者への栄養支援にも肝疾患の栄養に関する専門知識を発揮し、貢献することができる。
- 最新の栄養情報や臨床情報・ガイドライン等を、国内外のデータベースや文献から得て活用できる。
- 肝疾患の予防や診断・治療における栄養問題を抽出し、科学的に解析するとともに、新たなエビデンスの構築に向けて情報の発信ができる。
- 以上のような高度な知識および技術を有する者として、個々の肝疾患患者の状況に応じた栄養介入、栄養支援をした結果を検証し、その改善および発信を通じて、肝疾患栄養療法の向上に大きく貢献することができる。
肝疾患病態栄養専門管理栄養士の条件
肝疾患病態栄養専門管理栄養士の受験を申請する者は、次の条件を全て満たすことを要する。
- 日本国の管理栄養士免許を有し、管理栄養士としての人格と見識を備えていること。
- 本学会および日本栄養士会の会員であること。
- 申請年度分までの本学会および日本栄養士会の両会年会費を完納していること。
- 本学会認定「病態栄養専門管理栄養士」または、日本栄養士会認定「認定管理栄養士」を取得していること。
- 肝疾患病態栄養専門管理栄養士セミナーを1回受講していること。
- 肝疾患に関わる栄養管理・指導に、通算1,000時間以上従事していること。厚生労働省が認める肝炎医療コーディネーターの資格を有していることが望ましい。
- 肝疾患患者の栄養管理実績のうち下記何れかを有すること。
1.下記の中から2症例を有すること。
①急性肝炎、劇症肝炎
②ウイルス性慢性肝炎(B型肝炎、C型肝炎)
③非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
④アルコール性肝障害
⑤自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎など)
⑥鉄・銅代謝異常(ヘモクロマトーシス、ウイルソン病など)
⑦薬物性肝障害
⑧肝硬変
⑨門脈圧亢進症
⑩急性および慢性肝不全、肝移植術前後
⑪肝細胞がん2.厚生労働省が認める肝炎医療コーディネーターの資格を有しその活動を有しているもの*1。
注*1活動内容については報告書を作成し提出する。 - 本学会および日本栄養士会、および日本肝臓学会が認定する肝疾患領域の認定単位を20単位以上取得すること。単位取得の方法と単位数は、
“申請・更新細則”に別途定める。